うるさい!

声の調節が利かない人って
あなたの周囲にもいませんか?

必要以上に大きな声で、
たいていの人には興味のない話を
得意気に話すタイプの人です。

この言い得て妙な言い方は
大学時代のサークルコンパで知りました。

小洒落た居酒屋なのに
アヒルのようにガァガァ話す男に向けて、
繊細すぎて後に自殺した先輩が
「お~Mよ、お前声の調節こわれてねぇか?」
と、吐き捨てるように言ったのでした。

もちろんMさんには
意味が通じませんでしたから
先輩を悪く言ってましたけどね(ーー;

中学から大学入学以前にかけて、
声変わりしたモテない男が
ガァガァと声高になる時期があります。

言うまでもなく、彼の本音というか
魂の叫びとも言うべきものは、
「俺はここに居るぜ!俺だよ、俺!」
なのです。

皮肉なことに、それをするほど
周囲は彼を馬鹿にして
彼の存在をないものとして扱います。

寂しく、虚しくなった彼は
さらにジェスチャーが大きくなって
ますます「変な奴」扱いを受けるのです。

この哀れな循環は、
実は根が深くて
幼少時代にさかのぼります。

たまにデパートなどで
「あれ買ってっ!」と駄々をこねる
子供の声がだんだん大きくなって、
いよいよピークに達した頃に
「あ~っウルサイ!」
とばかりに買い与える馬鹿親がいますが、
子供はそのことで何を学ぶでしょう?

「大声を出さないと、要求が通らない」

という悲しい過ちです。

親がどうするべきだったかは、
賢明なあなたには解っていますよね?

「いいよ、買ってあげよう。
どれがいいか、よく観てみようか?
これかな?こっちかな?」

こうして最初に
「要求が通った!」
という満足感を与えてあげることで、
子供は無駄に大きなジェスチャーをする
必要性を感じずにすむのです。

もちろん大きくなっても
Mさんのように
居酒屋でガァガァなんてしません。

小さいころのボタンの掛け違いは
大人になっても引きずるのです。

同様に、子供をちゃんと体験しなかったり、
思春期のプチ不良を通過しなかったというのも
いい歳こいて引きずっているものです。

どこの職場でも
仕事の後にタバコなんか吸いながら
何時間もしゃべっている輩がいるものです。

一秒でも早く自分の世界に戻りたい
私たちからしたら理解できませんけど、
そう思う私たちだって、
高校生の頃は用もないのに集まって
ただタバコ吸って何時間も話しましたね。

今ふりかえると
「なにが楽しかったのだろう?」
と思うのは、
私たちがしかるべき年齢に
その馬鹿らしくも貴重な時間を
ちゃんと体験したからです。

こんなことを思い出したのは、
この頃手伝いに行っているホテルで、
大きな声で(本当にウルサいんです)、
タバコを吸いながら
何時間も話し込んでいる、
大人になりきれなかった
哀れなおばさまを観たからでした。

別に何をしようと勝手だけど、
ウルサイのだけは迷惑なんです。
他所でやってくださいね。