むかし、あるお婆さんがいました。
あまり身体が丈夫とはいえず、
人に頼ってばかりいました。
ところがあるとき、
娘夫婦が交通事故で死んでしまって、
残された孫を引き取ることになりました。
お婆さんは自分一人でも大変なのに、
とても孫の面倒まではみられなかったのですが、
親戚らしい親戚もいなかったのです。
お婆さんは覚悟を決めました。
「この子を立派に育て上げるまでは、
安心して死ぬこともできない」
実は知らされていなかったのですが、
お婆さんは癌を患っていました。
娘さんたちが死んでしまったので、
お医者さんはその事を言おうとしていましたが、
お婆さんの決心を聴いて黙っていました。
それからのお婆さんは
人が変わったように元気になり、
一生懸命お孫さんの面倒をみました。
お医者さんは薬が効いて
癌が治ってしまったと思いました。
月日がたって、お孫さんも立派に成長し、
お嫁に行くことが決まりました。
お婆さんはたいへん嬉しそうでしたが、
まもなく自宅で亡くなりました。
そういう規則になっているのか、
お婆さんは解剖にまわされました。
そこで分かったのですが、
お婆さんの癌は治っていたのではなく、
前よりも大きくなっていました。
しかしその周りを
正常な細胞が取り囲むようにして、
癌が広がるのを抑えていたそうです。
お婆さんが人に頼ることもできず、
自分を頼りにしているお孫さんのため、
強い使命感を持ったからこそ
起こった奇跡です。
介抱される側でなく
介抱にまわったほうが元気になるという、
これが健康の秘訣のようです。
健康にかぎらず、
あらゆることで頼られる側、
教える側にまわるのが
自分のためですね。