ボロは着てても心は錦織

衣錦之栄
読み方:いきんのえい
立身出世し、富と地位を得て、
立派な衣服を着て故郷に帰る名誉や
誇らしさを表す言葉。
「錦」は非常に高価な織物であり、
それを身にまとって帰郷することが、
最高の成功の象徴とされた。 

”故郷に錦を飾る”なんて
明治大正時代の考え方かと思ってましたが、
20代前半の頃、2~3歳年下の奴が
真顔でそれに近いことを言い出したので
笑うわけにもいかず、
ただ魂消たことがありました。

T君は、私が大学を辞めて
とりあえず就職した喫茶店の先輩でした。
店長以外は彼と私だけの小さな店で、
彼はかなりきつくあたるので
どうしたものかと思っていたのですが、
いつしか無駄話もできる仲になりました。

彼は家庭の事情で進学できず、
大学に進んだ友人にコンプレックスを感じ、
中退ながら、大学生だった私にも
敵対心を持っていたようで、
私がただの阿呆だと気が付いたので
打ち解けてくれたようでした。

彼の夢は、高校のクラス会に
誰よりもいい服を着て、
高級車で乗り付けることでした。

そのために、その店で喫茶店経営を学んで
いつか自分の店を、、だそうでした。

彼があまりにも純粋だったので
私はそれについて何も言えず、
というよりも、
その後彼の顔を見るのが辛くなったほどで、
彼が幸せになってくれることを
ひたすら願うしかありませんでした。